復興コンサート in 仙台トラストシティ 開催レポート

IMG_9078s2016年3月12日、仙台の音楽家による歌とフルート、ピアノによるアンサンブル演奏 「復興コンサート in 仙台トラストシティ ~祈り、そして光~」が開催されました。

写真:大峡勝一


開催前ボカシ’冷たい風が吹く中、17時からの開演が待ちきれない様子でだいぶ早くからお客様がお見えになっていました。開場すると、用意していた座席はいっぱいになって、あわてて追加席を増設しました。会場には子供からお年寄りまでおよそ100名の方が集まりました。


コンサートボカシ1コンサートはモーツァルト『アレルヤ』で華やかに幕開けしました。仙台トラストシティの会場は天井が高く、音がとてもよく響いて、まるで教会で聴いているかのようです。その後、ロッシーニ『スターバト・マーテル』、ヴェルディ『神よ平和を与えたまえ』、フォスター『すべては終わりぬ』、モーツァルト『フルートと管弦楽のためのアンダンテ K.315』など、演奏家たちはそれぞれの曲に込めた思いを語りながら演奏しました。

フルート独奏による日本の子守歌メドレーでは、五木の子守歌や武田の子守歌など、懐かしい歌が次々に登場しました。篠笛に似たフルートの音色が切々として身に染みるようです。ご高齢の方には特に響いている様子で、ご幼少の頃を思い起こしているのでしょうか、目を閉じてしみじみと聴き入る姿がありました。


106コンサート中盤で『見上げてごらん夜の星を』を会場のみなさんと一緒に歌いました。ある方は元気よく、ある方はつぶやくように、みなさんそれぞれのペースで歌っていました。ふと、あらためて「人の声は、なんて温かく、優しいのだろう」と思いました。石造りの床のこの会場は少し肌寒かったのですが、ほんのり温度が上がったかのように感じました。

プログラムの最後は『スタンド・アローン』の二重唱です。菊池さんが「震災後の演奏会で或る方に“聞けて嬉しかった”と言われた曲です。それ以来、大切なレパートリーになりました」と語りました。4人が奏でるハーモニーに乗せて、歌詞にこめた祈りと光が広い空に解き放たれてゆくようでした。


IMG_9535'演奏が終わると、喝采がどっと湧き上がり、アンコールとなりました。演奏されたのはおなじみの『故郷』です。楽器の音に二人の声が重なり、馥郁とした調べが会場を満たしていきました。一緒に小さく口ずさむ人もいました。涙を拭う姿があちこちにありました。背筋をただすようにしてじっと聴く人もいました。終わった瞬間に、ふたたび大きな拍手が起こって、多くのお客様が満ち足りた笑顔を見せてくださいました。その温かさとエネルギーをもらって、演奏家たちもとても嬉しそうでした。


 

いつしか会場の外は夕暮れて、キャンドルの明かりとイルミネーションがきらめいていました。そう言えば震災当日の夜、街じゅうが停電して真っ暗になっていた中、この仙台トラストタワーだけに明かりが灯っていたことを思い出しました。あれから5年、このあたりは震災の傷跡もすっかり消えて、一見すると何事もなかったかのように見えます。今日ここに集った人びとの心にはどんな思いが去来しているのでしょう。今日のこの小さな演奏会が、みなさんの心に小さくても、一瞬でも、灯りをともすことができたならさいわいです。IMG_9633【調整】

(レポート:音楽の力による復興センター・東北 伊藤みや)


069また、このコンサートでは、音楽の力による復興センターの活動記録写真展も併せて開催いたしました。コンサートを聴きにいらした方が足を留め、ボランティア・カメラマンによって収められた、今までの復興コンサートの歩みをご覧になっていました。素晴らしい演奏をしてくださった齋藤翠様、菊池万希子様、山田みづほ様、掛田瑶子様、今回のコンサートを企画・運営してくださった音楽の力による復興センター・東北の皆様、そして寒い中 ご来場いただきました皆様、本当にありがとうございました。

 


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